書籍情報
評価 | |
---|---|
購入形式(紙・Kindle・Audible) | 紙/Kindle(Audibleなし) ※マンガ |
出版社 | KADOKAWA |
試し読み | 可能 |
紹介ページの充実度 | 詳しい(Amazon紹介ページ) |
著者名 | 田中圭一 |
---|---|
執筆時の年齢(出版年-生まれ年) | 55歳(2017年出版-1962年生まれ) |
関連サイト | 田中圭一 (漫画家) – Wikipedia 田中圭一|note |
著者の職業 | 1984年漫画家デビュー。大学卒業後はおもちゃ会社に就職するも、1989~1991年に「週刊少年サンデー」に不定期で連載。 |
---|---|
経験・キャリアなど執筆背景 | 漫画以外では一般企業で、玩具メーカー営業マン、ゲームプロデューサー、マネージャーの職を経験。「10年近く続いたうつのトンネルからやっと出てきました」との記述あり。 |
過去の著作点数 | 10点以上(漫画作品) |
---|---|
前作から本書発行までの経過期間 | 前作『田中圭一のペンと箸』はほぼ同時期に発売 |
刷数・発行部数 | 23万部突破(2017年5月時点の新聞広告掲載情報) 出典:KADOKAWAプロモーションページ |
---|---|
書店などのランキング情報 | 2017年間ベストセラー第9位(単行本ノンフィクション他/日販調べ) 2017年 年間ベストセラー第9位(単行本ノンフィクション・教養書他/トーハン調べ) Amazonランキング大賞2017 第4位(本/暮らし・健康・子育て) 出典:KADOKAWA公式オンラインショップページ |
文体・雰囲気・謙虚さ | 著者の経験談はページ全体の約2割ほど。著者(漫画家)とアシスタントが同じ病に苦しんで克服した人たちをレポートしていく構成。最後に著者なりのまとめがある。読者への「私たちは待っていますだから焦らずゆっくりとこっちへ来てほしい」とのメッセージあり。 |
---|---|
他書からの引用、参考文献 | あり |
誤字・脱字 | 特に気づかず |
タイトルと内容のギャップ | 問題なし |
感想
サラリーマンと漫画家の二足のわらじを長年続けてきた著者による、ドキュメンタリーコミック。Wikipediaによる著者情報を見る限り、中途半端な二刀流ではなく、どちらの仕事もしっかりとやってきた印象を抱く。
著者が本書にかける思いは次のようなものだ。
青い空がグレイしか見えなくなる日々・・・
まるで電気イスに縛りつけられたような恐怖を感じる日々・・・そんな暗黒の日々を経験して
そこから脱出できた者として・・・今もトンネルの中で苦しむ人たちを救わずにはいられない
でもボクは医者じゃないから「こうすればいいよ」とは言えない
だから脱出に成功した人を取材してたくさんレポートをして・・・
苦しんでいる人が出口を見つける手助けになればいいと思っていますただひとりでもいい
このマンガでトンネルから出られる人がいれば・・・
登場する病の経験者たちの職業は、ゲームクリエイター、小説家、脚本家、編集者、ライター、エッセイスト、教師、ミュージシャン、AV監督と多岐に渡るが、一般的な会社勤めの方は、メーカー総務・営業部長、外資系OLのみで少々偏りがある印象。
ただ、内田樹氏、一色伸幸氏、大槻ケンヂ氏、まついなつき氏などの著名人物も含まれていて驚く。
また漫画原作者で精神科医のゆうきゆう氏も僅かなページであるが登場し、医師としてアドバイスしている。
心を打たれたフレーズとして、下記の一色伸幸氏のエピソードの中で出てきたものをご紹介したい。
そんなに重く考えないで うつは誰でもかかるもの
たとえるなら・・・ うつは心の風邪ちがう!! 風邪なんてなまやさしいもんじゃない
うつは 心のガンだ!!
いろいろな本で「心の風邪」、いや完全に治らないという意味で「心の骨折」等と喩えられることが多いが、「心のガン」と捉えるべきだ、という主張は刺さる。
世の中がうつは「ガン」だという認識を持つようになれば、「ガンだから休むのは当然」と思うので仕事も休みやすく、治療に専念しやすい。
たとえやむなく、自殺に陥ったとしても残された人間は自責の念を抱かずに、「寿命だった」と考えることができる…… という考えに大変共感した。
著者は「総まとめ」の中でこう述べている。
必要とされていると実感できる瞬間を持とう!!
人間は本質的に
・ 自分が好き
・ 肯定されたい
・ 必要とされたい
これに抗うと心が弱る
畑違いの仕事に転職したにも関わらず、早々に大きな成果をあげてしまった著者。その後成績が落ちてしまい、会社ではクレーム、愚痴、不満を受け続けて
「オレってなにもできないダメ人間じゃん」
「会社のお荷物だよオレって・・・」
と「自己嫌悪」に陥ってしまったそう。
私も転職して早々に病んでしまった経験があるので、この「自己嫌悪」と自分の存在価値を見失うことの苦しみはよくわかる。
すべてマンガで構成されている本ではあるが、非常に深い本。ベストセラーである理由に納得がいく一冊であった。

